ヒヨドリ(鵯/hiyodori)とは

 

分類•漢字•別名•英名•学名•由来
分類 動物界/脊索動物門/脊椎動物亜門/鳥綱/スズメ目/ヒヨドリ科/ヒヨドリ属
ヒヨドリ科 世界のヒヨドリ
ヒヨドリ科の鳥は世界で124種確認されている。
日本で見られるヒヨドリ科の鳥は大きく分けて「ヒヨドリ」と「シロガシラ」の2種類。

またスズメ目の最も近縁種はオウム目。

日本の亜種 8亜種が確認されていて、北のものは白っぽく、南のものほど羽の色が濃い。

8亜種の名前
ヒヨドリ、オガサワラヒヨドリ、ハシブトヒヨドリ、ダイトウヒヨドリ、アマミヒヨドリ、リュウキュウヒヨドリ、イシガキヒヨドリ、タイワンヒヨドリ

漢字
別名 ひえどり。

比衣止里(ひいどり)平安時代の和名抄での呼び名。
江戸時代前期の本朝食鑑では比与止利(ひよどり)とある。

英名 Brown-eared Bulbul
学名 Hypsipetes amaurotis
由来 日本語名
「ヒーヨ、ヒーヨ」という鳴き声に由来する説、ヒエを食べる事に由来する説などがあるが、ヒヨドリはヒエを食べない。

英名
ヒヨドリの赤茶色の羽に由来する。また「Bulbul」はヒンディー語(बुलबुल)またはペルシア語またはアラビア語(بلبل)に由来し、ナイチンゲールを意味する。ただし英語で「Nightingale」はサヨナキドリの事を指す。

学名
「Hypsipetes」は高く飛ぶ鳥を、「amaurotis」はぼやけた色の耳のを意味し、「ぼやけた色の耳の高く飛ぶ鳥」という意味。

 

特徴
見分け方 オスとメスは同じ姿をしていて、全体的に灰色の姿をしている。

くちばしが黒く、耳羽は赤茶色で、お腹には細かい白い斑点があり、下にいくほど大きく白っぽく見える。翼は茶色〜黒っぽく見え、頭はボサボサとしている。

大きさ/重さ 27.5cm/70~100g

スズメとハトの中間の大きさで、ムクドリ(24cm)より尾が長い分大きく見える。

飛び方 深い波形をえがいて飛ぶ波状飛行タイプ。

また、ホバリングもできるが、ハチドリやカワセミに比べると体が大きい為、バタバタしている。

性格 ヒヨドリ同士の縄張り意識が高く、繁殖期は特に鳴き声の主張が激しい。

また、花の蜜などを食べる際は、ヒヨドリが近づくと、他の鳥が逃げてしまうほどである。

似ている鳥
  • 青いヒヨドリのように見える「イソヒヨドリ
  • ヒヨドリと同じく身近な存在の「ムクドリ
  • 花の蜜など甘い物を好む食性が似ている「メジロ」などがいる

 

鳴き声
鳴き声の特徴 「ピーヨ、ピーヨ」と騒がしく鳴き、「ピーピョロピョロピ」と鳴くこともある。
さえずり 特定のさえずりを持たないとされるが、朝には「ヒヒ… ヒーイヒヒ…ヒーイヒーイ…」と鳴きながら縄張りを見回る。
ピーヨ

ピィチュージュリ

 

ピーピーピーヨ

 

分布•生息環境
分布 世界的に珍しい鳥
日本列島とその周辺にしか生息しない世界的に見ると珍しい鳥。

世界分布
世界分布はサハリン南部からフィリピン北部の東アジアの広範囲。

渡り鳥 渡り鳥の一面もある
日本の多くの場所で1年中見られる留鳥だが、北部のものは秋に群れを作って、暖地へ渡りをする事が知られている(日本国内を移動する漂鳥)

渡りで有名な場所
ヒヨドリの渡りが有名な場所には、津軽海峡の龍飛岬、愛知県の伊良湖岬、鹿児島県の佐多岬などがある。

龍の渡り
また1万羽以上のヒヨドリの群れが、ハヤブサなどに捕食されないよう、海面すれすれに集団で飛ぶ姿を、昔の人は「龍の渡り」と名付けて見守ってきた歴史がある。

生息環境 山〜都市部まで。

元々は山に暮らしていたが、2021年現在はどこにでもいる鳥になっている。

現在は都市鳥の代表に
また東京都内では1960年代後半までは秋から冬に見られる鳥(漂鳥)だったが、1970年代からは春から夏にも生息し、子育てもする留鳥へと適応した。

北海道 ヒヨドリは南方系の鳥だが、北海道全域でも見られる鳥。

北海道はヒヨドリの分布の北限と言われていて、北海道では北部になるにつれて観察記録が少なくなる事が知られている。

 

生態
非繁殖期 群れを作って渡りをする個体がいる一方で、3〜5羽程度の少数で行動する個体もいる。

3〜5羽の群れは家族群の可能性があり、非繁殖期でも家族関係が続いている可能性がある。

繁殖期 メスは雛のように羽を震わしながら鳴き、オスに食べ物をねだる求愛行動を行う。

巣材集め、巣作り、抱卵はメスの仕事で、オスはメスのそばに付き添うだけ。
雛が孵化すれば、オスも雛に食べ物を運ぶようになる。

繁殖日数
巣作り(?日)→間(1〜数日)→産卵(2〜3日)→抱卵(13〜14日)→育雛(10〜11日)→巣立ち(巣作りから巣立ちまで約1ヶ月ほど)

ヒヨドリの雛 巣立ちを迎えると、巣から枝伝いに移動して巣の近くの枝の上で、雛同士が身を寄せ合う。
雛の鳴き声

 

食性 ヒヨドリは甘い物を好んで食べるが、それ以外にもさまざまな物を食べる。

  • 植物食:果実、花蜜、花弁、葉、新芽、野菜
  • 爬虫類:昆虫、クモ、カタツムリ、セミ
  • 人の食べ物:パン、ミルワーム(雛)、コオロギ(雛)、すり餌(雛)、キウイ(雛)など
フン ヒヨドリのフンは、食べ物によって内容物が変わり、色にも変化がある。
水っぽいフンから、黄色いフン、赤っぽいフンから、黒っぽいフンまでさまざま。
知能 日本の野鳥ではカラスの仲間に次いで知能が高いと言われている。

飼育下の雛の観察によると、九官鳥やオカメインコほどの知能はあるとされ、人間の顔を見分け、時には人によって態度を変えたり、物まねもするくらいの知能が確認されている。

寿命 野生では4〜5年と言われ、飼育下では8〜10年の生存記録がある。
花粉媒介者 ヒヨドリは花ごと食べたりせず、くちばしを花に入れて蜜を飲むので、花粉を運ぶ重要な役割を持っている。

また木の実も食べる事から、種を遠くまで運ぶ役割を持っている。

 

人間との関係
害鳥 ヒヨドリは野菜を食べる為、農家から害鳥として嫌われている面もある。

対策
ヒヨドリ対策としては、防鳥ネットが一般的な方法。
また支柱を立てない、フェンスの近くに植えないなど、ヒヨドリがとまって届く範囲に植物を植えないことも一定の効果がある

狩猟鳥 農作物へのヒヨドリの食害を受けて、駆除がスムーズにできるように、ヒヨドリは狩猟鳥に指定されている。

狩猟免許を取得すれば、猟期に限り、狩りをすることができる。

飼い鳥 よくなつく鳥
雛の頃から飼育すると、非常に人馴れする事から、平安時代には貴族の間で盛んに飼育され、古今著聞集などに競走馬のように名前をつけて可愛がっていた記録が残っている。

現在ではヒヨドリに限らず、野鳥を飼育するのは法律で禁止されている。

放鳥までの期間、保護するのは黙認されることもあるが、違法なのは変わらないので自己責任。心配な方は、自治体へ直接問い合わせるのが早い。

カメラマン ヒヨドリは縄張り意識が強く、他の鳥を押しのけてしまう事から、カメラマンからは困った存在になっている。

海外では人気者
また地味な見た目からヒヨドリを積極的に撮影しているカメラマンは少ないが、海外のバードウォッチャーにとっては珍しい鳥なので、人気のある鳥となっている。

バードテーブル 冬の庭先に、ミカンやリンゴなど果物の半切れを置いておくと、すぐにやって来て独り占めしてしまうため、メジロを呼びたい人には厄介な存在。
市の鳥 富山県砺波(となみ)市の市の鳥に指定されている

 

文化•歴史
秋の季語 秋になると人里に現れて、南天などの実を食べていた(現在では1年中人里にいる)

俳句
「ひよどりや霜の梢に鳴き渡り/惟然坊 」

「鵯(ひよどり)もとまりまどふか風の色/惟然坊 」

万葉集 呼子鳥という名前で、万葉集にも登場するヒヨドリ。ただ、この呼子鳥はカッコウだったという説もあり、はっきりしていない。

和歌
「大和には 鳴きてか来らむ 呼子鳥 象の中山 呼びぞ越ゆなる/高市連黒人(たけちのむらじくろひと)」

「世の常に 聞けば苦しき 呼子鳥 声なつかしき 時にはなりぬ/坂上郎女(さかのうえのいらつめ)」

「春日なる 羽がひの山ゆ 佐保の内へ 鳴き行くなるは 誰れ呼子鳥/作者不明」

地名 一ノ谷の戦いで、源義経が平家の軍勢を追い落とした深い山あいを「ひよどり越え」と言い、そこが春と秋ヒヨドリの渡りの場所になっていたことに由来する。

ひよどり越えの場所
神戸市の市街地から六甲山地の西を越えて北方に向かう山路

図鑑情報
新•山野の鳥(2011年第14刷) ピーヨまたはキーヨと甲高く、伸ばす声。市街地から山地の林。秋に南西方向に移動する群れが見られる。目の下後方は茶色。興奮すると頭の羽毛を逆立てる。ピーヨロイロピなどと鳴くこともある。
フィールドガイド日本の野鳥(1996年第8刷) スズメよりずっと大きく尾は長目。ピーヨ、ピーヨと騒がしく鳴き、飛びながらピーッ、ピーッ、と鳴く。ピーピョロピョロピと鳴くこともある。全国に分布し繁殖するが、北部のものは秋に暖地に移動する。10〜11月には次々と移動する群れを各地で見る。低地から山地の林にすみ、庭や公園でも普通に見られる。深い波形をえがいて飛ぶ。
散歩で楽しむ野鳥の本(2008年初版) 好き嫌いしない都市進出の先駆者。今では都市鳥の代表格となったヒヨドリの場合は、特に食性の幅の広さが都市での生活を支えていると考えられます。ヒヨドリは元来、木の実や花芽など植物質の食べ物を好む鳥ですが、都市への進出とともに雑食性へと変化し、季節に応じたさまざまなものを食べています。

参考文献

北海道北部におけるヒヨドリの繁殖期の分布」「バードリサーチニュース2005年11月号」「ヒヨドリスト〜ヒヨドリの雛 保護観察レポート〜

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